前回の歴史クイズ(復習)→第5章Lesson3
イエスが十字架で死んだ後、イエスの弟子たちは恐れて引きこもりましたが、イエスの復活と昇天を目撃してイエスの教えを思い起こし、以後は命がけで福音を宣べ伝えたといわれます。ローマ帝国の各地に教会が設立され、4世紀末、キリスト教はローマ帝国の国教となりました。
キリスト教は愛と義の教えであり、神の慈しみと裁きがある教えとされています。
カトリックとプロテスタントの違いは何でしょうか?また、ヨハネの黙示録とは何でしょうか?現代の世界に大きな影響をもつキリスト教の歴史観を学んでいきましょう。
【第5章Lesson4】中学歴史要点クイズ問題スタートです!
目次
復活したイエスに会った使徒たちは迫害のもとでも福音宣教へ!キリスト教は国教に
( )のことばを答えてみよう!
- 死んだ者が栄光の体となって生き返ることです。ロシアの文豪トルストイの「◯◯」という小説があります。マーラーの交響曲第2番は「◯◯」といいます。
- 迫害→公認→◯◯です。ローマ帝国の採用する教えとして「国の宗教」となります。
- キリストの福音を教える会堂、2文字を取り出すと・・・
❶ イエスの復活と再臨
聖書には、メシアの初臨と再臨があることが繰り返し書かれています。初臨のイエス・キリストは受難のうちに死にます。だが、復活して栄光の体になり天に上り、人類が神に立ち返るように執りなし祈っているとされています。復活したイエスの昇天は多くの弟子たちによって目撃されていました。
キリスト教では肉体は死んでも魂は死なないとされています。やがて、イエスが再臨する前後には旧約時代の聖徒も新約時代のクリスチャンもすべて復活し、地上に王として再臨したイエス・キリストとともに、この世を千年間統治するとされています。
❷ ローマ帝国の国教
迫害→公認→国教です。キリスト教は、ローマ帝国の採用する教えとして「国の宗教」となりました。コンスタンティヌス帝はキリスト教の信徒となり、教会の指導者である祭司には特別の地位が与えられました。392年、テオドシウス帝はキリスト教を国教とします。
キリスト教が国家権力と結びつくなかで、司教・司祭などの聖職者身分が成立し、教会の組織化が進みました。世俗的な権力を持ったことは、霊的にはキリスト教の堕落につながったといえるかもしれません。
❸ キリスト教会の広がり
「目からウロコ」(→Lesson2:コーヒーブレイク参照)のパウロは、ユダヤ地域を出てギリシャ・ローマへと福音を広める宣教旅行をし、各地にリーダーとなる長老を任命して教会を設立していきました。その苦難を彼は書きしるし、たくさんの問題をかかえていたコリント教会を励ます手紙を送っていました。
「ローマ人に鞭打たれたこと3度、石で打たれたことが1度、難船したことが3度、一昼夜、海上を漂ったこともあります。何度も旅をし、川の難、盗賊の難・・・たびたび眠らずに過ごし、飢え乾き、寒さの中に裸でいたこともありました。・・・私は、キリストの力が私をおおうために、大いに喜んで弱さを誇りましょう。」
苦難のなかにあるテサロニケ教会に対しては「悪に対して悪を返さないように」と忠告し、次のことばを書いています。「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべてのことにおいて感謝しなさい。これが、キリスト・イエスにあって神があなたがたに望んでおられることです。」
ローマの教会に対しては次の手紙を書き、励ましています。「苦難さえも喜んでいます。それは、苦難が忍耐を生み出し、忍耐が練られた品性を生み出し、練られた品性が希望を生み出すと、私たちは知っているからです。この希望は失望に終わることはありません。なぜなら、私たちに与えられた聖霊によって、神の愛が私たちの心に注がれているからです。」
パウロの宣教旅行(出典:パウロとはーコトバンク)
プロテスタントとカトリックの違いとは?
15世紀には、権力や富を求めるローマ=カトリック教会を批判してキリスト教の革新を求める「宗教改革」が始まりました。
ルターはローマ教皇や皇帝の抑圧に屈せず、諸侯や市民、農民に支持されて抵抗(protest)し、聖書をドイツ語に翻訳し一人ひとりの信者が「万民祭司」となることをめざしました。これがプロテスタントの教会のおこりです。
カトリック教会も教えを明確化し、教皇の権威を確認して内部の腐敗をひきしめ、イエズス会などは海外にも積極的に宣教していきました。フランシスコ=ザビエルによる日本へのキリスト教伝来(1549年)も、このようにしてはじまりました。
カトリックの特徴
バチカン市国南東端にあるカトリック教会の総本山サン・ピエトロ大聖堂(出典:Wikipedia)
カトリックではローマ教皇の絶対的な権威があります。教会のリーダーを神父(しんぷ)と呼びますが、そのメッセージの骨格はローマ教皇の発するものを土台としています。
近年、一人ひとりの聖書理解が重要だとされてきています。海外宣教に力を入れ、ヨーロッパやアメリカはプロテスタントの信者も多いですが、中南米諸国はほとんどがカトリックの国です。
教皇ヨハネ・パウロ2世は129カ国を訪問し1981年には来日されました。2019年にはフランシスコ教皇が来日され、広島を訪問し核兵器廃絶を訴えたことは記憶に新しいですね。
プロテスタントの特徴
95か条の論題(出典:Wikipedia)
プロテスタントの特徴は、聖書の教えを一人ひとりが理解することを重視している点です。
教会のリーダーを牧師といいますが、それぞれが自立した教会なので聖書理解も少しずつ異なります。だからこそ「万民祭司」とルターがいったように、一人ひとりが自立したクリスチャンに成長し聖書理解を深めることが大切となります。
優れた教会も数多くありますが、牧師が信徒を支配するカルト的な教会が生まれる問題もあります。牧師や長老は指導者であるとともに、信徒に仕える僕(しもべ)でなくてはなりません。
カトリックとプロテスタントの十字架の違い
カトリックでは十字架にキリストが架かっていますが、プロテスタントでは十字架のみです。これは、キリストはすでに復活し天に上がっているのだから十字架にはいない、という理解があるからです。
一方で、日本では、カトリックとプロテスタント諸派の共同作業によって「新共同訳聖書」「聖書協会共同訳の聖書」が発行されるなど協力する動きも生まれています。
イエス・キリストを救い主とするキリスト教の3つの宗派であるギリシャ正教、カトリック、プロテスタントは、それぞれ自己改革を続けながら現在に続いています。
今日、世界における信者数はすべての宗教の中で最も多く、22億人を超えています。
新約聖書にはイエスキリストの教えが満載!ヨハネの黙示録とは何?
( )のことばを答えてみよう!
- 新しい契約の書です。◯◯聖書。
- 使徒ヨハネが見たり聞いたりしたことを書いたものです。「ヨハネの◯◯録」。◯◯とは「暗黙のうちに考えを示す」ことですが、キリスト教では神が人に真理を啓示することを言います。
❶ 新約聖書(新しい契約の書)
「新しい翻訳」ではありません。神との「契約」です。キリスト教の聖典である「聖書」は、ヘブライ語(ヘブル語)で書かれた旧約聖書と、ギリシャ語でイエスの教えをまとめた新約聖書とがあります。ユダヤ教では旧約聖書のみを聖書としています。
イエスは3年半の公生涯の間に、神の国について、人の救いについて多くの教えを語り、メシアにしかできない病の癒しや奇跡を行いました。これらのイエスの言行を書いた4つの福音書はじめ、イエスの復活と昇天を見た使徒たちの働き、そして使徒たちの書簡が書かれてあるのが新約聖書です。
イエスと弟子たちとの最後の晩餐(レオナルド・ダ・ヴィンチ作)出典:Wikipedia
❷ ヨハネの黙示録(もくしろく)
新約聖書の最後にあり、パトモス島にいた使徒ヨハネの魂が天に上げられ、やがてすぐに起こること、見聞きしたことを示されて書いた預言書です。
新約聖書(出典:Wikipedia)
御使いはヨハネに「この書の預言のことばを封じてはならない。時が近いからです」といいます。
神を信じる者は天に上げられるが、世の終わりには大きな天変地異や患難がこの世を襲い、大言壮語を言う者や偽預言者が出没します。
だが、最後には再臨したイエス・キリストの裁きがくだり、神に敵対する者は滅ぼされ、地上に千年間のイエス・キリストの王国が誕生する、とあります。
そして、その天地も過ぎ去り、神を信じる者は永遠に生きるいのちを得て新しい天と地に住む、とされています。
将来の預言だけに、キリストの再臨の時期など、キリスト教会の中でも解釈はいくつかに分かれていますが、黙示録には「見よ、わたしはすぐに来る。それぞれの行いに応じて報いるために、わたしは報いを携えて来る。」と書かれてあります。
永遠のいのちが生きるという新天新地とは?新しいエルサレムとは?
キリスト教には、肉体は滅びても魂は永遠に生きる、この世のものは全て過ぎ去り新しい天と新しい地が作られる、との歴史観があります。
ヨハネの黙示録には、新天新地について「御使いは御霊によって私を大きな高い山に連れていき、聖なる都エルサレムが神のみもとから、天から降って来るのを見せた。都には神の栄光があった。」「水晶のように輝くいのちの水の川が、都の大通りの中央を流れていた。こちら側にもあちら側にも、十二の実をならせるいのちの木があって、毎月一つの実を結んでいた。その木の葉は諸国の民を癒した。」「もはや夜がない。神である主が彼らを照らされるので、ともしびの光も太陽の光もいらない。」とあります。
コーヒーブレイク
旧約聖書のトップにある創世記は「はじめに神が天と地を創造された」から始まりますが、その時の神の園エデンは、「あらゆる宝石に取り囲まれていた。赤めのう、トパーズ、ダイヤモンド・・・」(エゼキエル書)とあります。
新約聖書のラストにある黙示録には、天から降ってきた新しいエルサレムの描写を「都には神の栄光があった。その輝きは最高の宝石に似ていて、透き通った碧玉(へきぎょく)のようであった。第六はあかめのう・・・第九はトパーズ」とあります。
天地の始まりの時と、新しい天と地とが同じ描写となっていることは興味深いことですね。
ロバ先生より
第5章では、旧約聖書にあるキリスト教以前のヘブライ民族の歴史を学び、新約聖書にあるイエス・キリストの誕生から十字架での死、そして復活し、やがて再び地上に再臨するとの教えを紹介してきました。イエス初臨のときのイエスと宗教指導者との律法の解釈の違いと対立についても、具体的な事例を聖書からあげて学びましたね。これらを基礎知識として、自分で判断できる力を高めていきましょう!
次回の歴史クイズ→第6章Lesson1
※順番に読み進めると知識が深まります。
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